現在、英会話スクールで使用されているほとんどのテキストは日本語がないものが多いと思います。やはり日本語の説明文があったほうが講師も生徒も学習しやすいのではないのでしょうか。
テキストに日本語の説明がないと講師はそのページの会話についていちいち説明をしなければなりません。
ところが、説明に時間をかけていたらレッスン時間が大幅に減ってしまいます。そのためにもあらかじめ日本語の説明が書いてあったほうが時間のムダがなくなるはずです。
英語で簡単な会話を紹介してその英語には訳文をつけず、そのページ上か下に日本語の説明をつけておくのです。または別冊のかたちでもかまいません。その日本語の説明はそのページで学ぶ会話についての説明だけに留めます。こういったテキストが最適だと思います。
また、現在のテキストの欠点は、会話の場面設定が型通りで、登場人物にも個性がないことです。それも朝9時から夜5時までの決まりきった生活パターンでの会話です。あまりに生活感も人間味もないのが多いものは親近感を感じることができません。
おまけにテキストの中ではいつも良いことしか起こらず、アクシデントなど少しも起きません。でも日常生活でそんなに良いことばかり起こるのでしょうか。
事故やトラブルのために電車が遅れて会社に遅刻したり、深夜の間違い電話に怒ったり、さまざまな出来事があるはずです。
当然、テキストには1日24時間の会話を紹介しておかなければ、実際の生活には役立たないと思いますし、さまざまな場面での会話パターンを学習しなければ無意味になりかねません。
このように非現実的なテキストが普及した背景には、テキストをつくる出版社の問題があります。
アメリカやイギリスの出版社では、編集者や作者を含めて10~50人ぐらいの人が集まって、1冊のテキストやCDをつくっています。そうなるとそれぞれ人の意見が食い違い、誰かがおもしろい場面を入れようとすると、一方で誰かが反対することが頻繁に起こります。その結果、出来上がるテキストは中途半端になり、毒にも薬にもならないありきたりのテキストになってしまうのです。
教材として考えれば、英会話という分野だけではなく、数学にしろ、物理にしろ、どこの国を探しても、それほどおもしろいテキストはまだ少ないと思います。しかし、テキスト全ページをベストセラー小説のようにおもしろくするのは無理としても、多少なりともユーモアや現実生活に即した項目をつくる必要があると思います。