日本人は中学・高校・大学などであまりおもしろくない英文法を勉強してきています。
そのせいか、英会話スクールに行ってまで文法をもう一度勉強するのはどうもいやなようです。たとえば、入学してきた生徒にテキストを見せると、「あーあ、また文法か」と、一様にいやな表情をするものです。
講師としては、テキストを使わないのであればフリートークで教えていくしかありません。ところが、生徒が望むフリートークで教えても、まったくレッスンにならないのです。
教室に入ってきた生徒は、まず講師が何か話し出すのをじっと待っています。日本に来て間もない講師の場合は特に、日本についての知識や生活習慣をあまり詳しく知りませんから、たいした質問ができません。お互いに何も話すことがなく、結局、「今日の朝食は何を食べましたか?」というような会話をレッスンのたびに繰り返すことになってしまうのです。
また、講師にしてみれば生徒から同じ反応しか返ってこないという不思議な現象に遭遇して、頭を抱え込むことがあります。
たとえば、「週末は、どう過ごしましたか?」という質問を生徒にすると、10人中7人ぐらいが「寝てました」、次の生徒も「ゴロ寝」、その次の生徒も「ゴロ寝」、「ゴロ寝」という答えが返ってきます。
私は十数年アメリカの西海岸に住んでいました。アメリカだと、「いつ、どこで、何を、どのようにしていた」と、具体的に答えるのが普通です。
ですから、日本に来て間もない講師は、「えっ、ずっと寝てただけ?」と驚き、日本人はよほど睡眠をとるのが好きな国民だと誤解してしまいます。大げさにいえば、このように「ゴロ寝」「ゴロ寝」で、毎回レッスンが終わってしまうことすらあるのです。
しかし、いろいろ細かく質問していくと、テレビでお笑いの番組見たとか、「夜の8時ごろ、友達から電話があった」とか、結構さまざまな出来事が起きているのです。
また、18歳くらいの女のコに「週末どうすごしたか?」と質問すると、「海に行った」とだけ答えます。それ以外は何も話さないで会話はおしまい。
本当はもっとさまざまな体験をしているはずで、ちょっとエッチなこともしているかもしれません。そういう話は友達同士だとかなり詳しい部分まで話すのでしょうが、それ以外の人には取り立ててプライベートな話をする必要がないと思っているのでしょう。そして、グループレッスンではよくある「海へ行った」と答えたら自分の順番はもう終わったと思い、その後に続く会話をまったく考えない人も中にはもいます。
こうした答え方しかしないのは、決してボキャブラリーや会話力の不足ではないと思います。英語で何といえばいいのかわからないこともありますが、やはり、あまり親しくない人の前やレッスン中にそうしたプライベートな会話をしたことがないのが大きな原因のようです。
もうひとつの原因は、普段あるトピックについて「ブレインストーミング」していないことが挙げられます。ブレインストーミングとは、その話をする前に頭の中で練習、または一人でイメージトレーニングすることです。日本の教育問題もありますが、社会で仕事をはじめることになれば、必ず必要になります。
たとえば、プレゼンテーションやクレーム対応などです。またプライベートでも自分の「考え方」をうまく述べることもできるようになります。