「どうして英語圏から日本に来た人は英会話スクールの講師になるだろう」と疑問に思う人もいるでしょうから、その裏側をお話ししましょう。
毎日が繰り返しのサラリーマン、サラリーウーマンの生活に飽きて世界を渡り歩く人、大学で日本語を勉強して日本に興味を持った人、日本人と偶然親しくなって日本のことを聞いて行ってみたくなった人、五国で学校の先生をしていたが、給料が安く社会的評価も低いという環境に疲れて来日した人。彼女にふられて、また離婚してふらりと国を飛び出した人など、本当にいろいろな人がいます。
このごろでは、20代前半の講師には、母国の大学で日本語を学んだ人が結構いるようです。これは、最近日本に興味を持つ学生が海外で増えてきたことの表れでしょう。
日本では「派遣切り」の問題があるにしろ、まだまだ終身雇用が根強く残っていて、卒業したらすぐに就職すべきだという意識がありますが、アメリカ、イギリス、オーストラリアなどでは、卒業したあと海外で1~3年いろいろな経験を積むのは必ずしも変わったケースではありません。
最近増えているのが、ワーキングホリデー制度で日本に来ている人達です。この制度はイギリス、カナダオーストラリア、ニュージーランドなどの18~30歳(それぞれの国で年齢制限の違いはある)の青年が、英会話を学びながら1年間滞在できる制度です。もちろん仕事もできます。これを利用して、日本で英会話スクールの講師をしている人も小さな教室では多いのです。子供向けの英会話教室などではワーキングホリデーで来たオーストラリア人をよくみます。
日本語学校で日本語を勉強しながら、生活を支えるために英語を教えるというパターンも多いようです。こういう人は午前中は日本語学校、午後からは大手英会話スクールという生活をしています。
日本語講師の教え方を見ながら、自分が教える際にその経験をいかして、上手に教える人も多いです。
日本や韓国で英会話ブームが起きているという話は英米、オーストラリアなどで広まっているので、95年から05年の10年間で、英語を教える資格をまず取ってから、来日するという人が増えました。その資格が日本人に英語を教える時に役立つかどうかは別にして、この傾向が続けば講師の質が高まることになるでしょう。
日本で英会話講師をずっと続ける外国人はめったにいません。
日本が気に入って働き続ける人もいますが、日本語をマスターすると、翻訳者、コピーライターになったり、自分で事業を起こす、また貿易関係などの日本の会社に就職したり、と日本語を生かせる仕事を求めるようになります。結局、そういう人たちにとって大手英会話スクールの講師という職業は、次の新しい職に移るまでのつなぎなのです。