英会話講師に求められているのは、教える技術の高さだけではありません。少なくてもアトラスではそうです。最近の中身のないテレビタレントと同じように「質より人気」という時代だからです。
以前、ある企業から「英会話講師を派遣してください」と依頼されたスクールがありました。さっそく条件面の交渉が始まり、レッスン料については何の問題もなくスムーズに決定しました。生徒はビジネスパーソンが中心ですから、担当者はできるだけ質の高い講師を派遣したいと考えていました。ところが、相手側は22,23歳の若い外国人女性講師を希望したのです。
担当者は「良い講師を派遣したいので男性でもいいですか?」と交渉を続けました。しかし相手は「いや、できれば女性のほうがいいんですよ。若い女性のほうが」と、応じてくれません。
1週間後に、担当者は最適だと思った男性講師を選び、「中年男性に教えるのが得意な男性講師がいるのですが、どうでしょうか?」と相手に聞きました。すると、「ああ、そうですか。わかりました。すみませんが他の英会話スクールにすでにもうお願いしました」という結果になってしまったのです。
やはり、大手の英会話スクールのみならず日本の英会話教室では、生徒に人気があるのはまずルックスの良い講師となります。ルックスというよりは雰囲気だったりというのもありますが、白人で金髪、青い目が一番人気があると思います。OLさんや学生の生たちの「あの講師カッコいいね」とか「どこどこの英会話スクールに行くとカッコいい先生がいる」といったウワサ話が講師の耳にも入ってくるのです。まるで芸能人みたいです。
最近ではルックスだけではなく、やさしいとか、陽気な人、あまり怖くない人といった項目も付け加えられるようになりました。
講師も生徒も男性の場合は、あまり攻撃的でない講師が好まれます。講師もありきたりの会話ばかりだと退屈ですから、少し刺激的な話をしたくなるときがあって、世界同時金融危機を話題にしてたりしています。
すると生徒は「この講師は日本のことがよくわかっていない」とか「日本が嫌い」というふうに誤解してしまうのです。日本のビジネスを少しでも批判するものなら「あっ、この講師は日本嫌いの攻撃的な外人だ」と思い始めるのです。これは教室の外を出たプライベートも同じ現象が起きます。
やはり講師としては、話題にも一定の線を引いて会話しなければ自分の仕事が危うくなります。くれぐれも日本のビジネスや政治、宗教に関してコメントすることは控えなければなりません。(上級者のマンツーマンレッスンならば、環境問題、経済摩擦などシビアな問題もディスカッションのよい教材になるのですが)
ヘタな話題を持ち出しながら、厳しく熱心に教えて嫌われるより、明るくやさしく振舞って「質より人気」を得た方が稼げるケースが多過ぎるようです。これは今の日本の社会的なレベルなのでしょうか。一昔前のスパルタ教育の時代はすごい人材が育って日本から飛び出したようですが。