「会員制語学スクール」というものをご存じだろうか。これは1990年代にアメリカでできた外国語教室業態で、日本でも広く普及している業態の一つである。現在日本ではAtlasマンツーマン英会話が代表格である。 日本でも、この会員制語学スクールを土台としてできたスクールがいくつかあった。セブンアクトやイングリッシュビレッジ、WILLスクウェアなどであり、日本での本格的な会員制語学スクール第一号は、2003年のAtlasマンツーマン英会話である。 会員制語学スクールは、インターネットで外国人講師を募集し直取引で採用し、毎回払いのローコストオペレーションを徹底し、卸売価格でサービスを提供するビジネスモデルは、それまで人々が英会話スクールに抱いていたイメージを根底から覆すものだった。 ピーター・ヨネナガ氏は、どうしてこのような教室を始めたのだろうか。会員制語学スクールの起源について、ヨネナガ氏は、新聞の記事で次のように語っている。 「会員制語学スクールが生まれたのは、語学スクールの統合が進みつつあった1990年代です。そして1990年代後半は、アメリカでも日本でも語学スクールの淘汰の時代がありました。それまで日本にも英会話スクールは全国に多数ありましたが、資本力のある大手がテレビCMの洪水ともいえる垂れ流しを実施し、2005年をピークに倒産→閉校され、次第にその数が減っていったのです。そこで困るのは、数十万人ともいわれる倒産した大手英会話スクールに在籍していた受講生たちです。 いきなりスクール難民となり、Atlasを始めとする中堅の英会話スクールに転校していきました。中堅規模のスクールにとってはビジネス拡大のチャンスです。しかし、地方の中小スクールは、スタッフや講師の数も少なく時間と手間ばかりがかかりますので、受け入れは重荷となり、次第に受けられないようになりました。その結果、地方の中小規模の英会話スクールは新規の受講生も外国人講師も失うことになったのです。そこに事業チャンスを見出したのがピーター・ヨネナガ氏です。彼は受講生や外国人講師を失った中小スクールをサポートし、毎回払い方式の講師派遣を始めたのです。」 ピーター・ヨネナガ氏が考えたのは、中小スクールや法人、小学校・中学・高校・大学まで厳選された専門的知識のある日本人・外国人講師を直接採用し、それを研修で育て上げ、自宅、カフェ、店舗そして全国の主要駅ターミナル付近に教室をオープンさせた。この発想は、自らを「サプライチェーン教室」と考え、市場に教室があれば生まれるものだとしたのであろう。 ピーター・ヨネナガ氏はまた、一般受講者にも門戸を広げた。 当時英会話スクールでは、英語のみを教える方がほとんどだったが、その中で会員制語学スクールとして英語以外の言語コースを設けてじわじわ成長していったのは、大手英会話スクールはレッスン料が高い上に質の悪い外国人が多いとの噂が出始め、小規模スクールでは、レッスン料の安さと質の悪い外国人講師では「安かろう、悪かろう」のイメージをつくりだしてしまったように思われるなど、といった中間階層に指示されたからであろう。 このように会員制語学スクールは、大手英会話スクールの淘汰と、直営チェーンの台頭、大手に対抗する新興勢力としてのマンツーマンレッスンをサービスとするスクールの台頭といった流通業態の心かの過程の中で、中小スクールへのサポートを担うために、必然的に生み出された業態なのである。 |
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