生徒が40代、50代以上の場合、講師としては間違いを指摘するのにかなり神経を使わなければなりません。さらに年齢や地位の高い60代の人や重役、社長になると、間違いを直すこと自体、かなりの勇気が必要になります。地位が高い人の中には間違いを直すと怒り出す人もいるからです。
グループレッスンでは、とくに重役や社長さんとその部下が一緒になったクラスを教える講師は、なんのトラブルもなくレッスンが終わることを神に祈らなければなりません。部下の目の前で間違いを指摘されて喜ぶ上司はどこにもいませんから。だからテレビCMでやっている「NOVA友」なんというのはありえないのです。
企業で英語研修を行なう場合は、やはり管理職とヒラ社員を別々のクラス編成にするほうが、講師の健康のためにはよさそうです。Atlasで現にそうしています。
ビジネスパーソンの生徒とレッスンで経済について話したことがありますが、生徒のほうは一生懸命何かを説明しようとしているのに、私はその話題とは何の関係も無い文法的な間違いを直そうとしました。すると生徒はそれが頭にきたらしく、「今は経済の話をしているのだから、そんな文法的な間違いはどうだっていいだろう!」と日本に来たばかりの時に怒られたことがあります。
こんな時は、その場で間違いを指摘しないで、レッスンが終わってからホワイトボードなどに書いたほうがよかったと思います。気楽そうに見えるAtlasマンツーマン英会話の講師たちも、目に見えない苦労がたくさんあるのです。
ただし間違いを直すには、やはり若いうちのほうが有利だと思います。年齢が高くなればなるほど素直になれないものです。Atlasの50歳以上の生徒さんは頭が柔らかい人が多いですが。
言語の覚え方には個人差があり、何年勉強しても同じ間違いをする人がいます。はっきり言えば一生直らないかもしれません。
たとえば、日本からアメリカに行って50年暮らしたとしても、最初に覚えこんだ間違いが直らず、ずっと間違った言い方を繰り返している人もいます。会話としては完璧に通じていますが、微妙な間違いがずっと直らないのです。
自分の努力で直せればそれにこしたことはありませんが、どうしてもダメなものを無理に直す必要はないと思います。Atlasではそれを具体的に説明して、できる限りのことはしています。
故人ですが、私の尊敬するソニーの盛田会長の話す英語は、ちょっと間違いがあっても、立派に通用します。ご本人にしろ自分の英語が完全なものだとは思っていませんし、間違いを直して完璧な英語にしようとは思っていなかったことでしょう。通じることが最優先という例だと思います。
日本生まれで日本に育った純粋な日本人でも、みんなNHKのアナウンサー並みに美しい日本語を話しているわけではないわけですので、普段の会話の中では平気で言葉を省略したり、言葉を間違えたりしています。それでも通じますし、日常生活ではこれといって支障がないはずです。
英会話の基本は、まさに相手に通じることが先決で、文法にのっとった模範的な話し方を練習することだとAtlasでは考えています。だからマンツーマンレッスンなのです。
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